言葉
子供のころ、雨降りの朝起きると親父は必ず囲炉裏に座り火を点していた。いつも無言で小さなともし火を見つめていた。いくつになった頃だろうか、ことば少なの親父が何度も繰り返し話してくれたことばがある。人は愚かな方がいい、他人と競い奪いあうことがないから。人は愚かな方がいい、他人への憎しみや妬みをもつことがないから。人は愚かなほうがいい、ことばで他人を傷つけることがないから。人は愚かなほうがいい、他人を損得抜きで好きになることが出来るから。人は愚かなほうがいい、自分のこころに素直に生きることができるから。こんな言葉であったように記憶している。今振り返ってみると、ずいぶん親父の教えを裏切ってきたように思う。都会の雑踏に揉まれ自分の姿・形を見失っていたのかも知れない。今になって親父の言葉が身に沁みている・・・
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